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オフィスが向かう未来とは-月刊総務代表豊田氏とNTTCom山本氏が語る「今後のハイブリッドなオフィス戦略」

2022.09.26

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コロナ禍における緊急事態宣言等を経て、企業のリモートワーク導入率は大幅に増えている。しかし、緊急避難措置的に在宅勤務を徹底した結果、リモートワークならではの課題が生まれ、出社率が増えているのが実態と言える。

月刊総務 代表、戦略総務研究所 所長の豊田氏は、働き方について最大限の多様な選択肢を提供することが戦略的な総務の今後の行動原則になると話す。

一方、NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)は、リモートワーク実施率が80%を超え、2022年の7月からは勤務場所を自宅とした上で、日本国内どこでも住めるようになった。

リモートワークが浸透した先のステップにはどのような課題があり、乗り越えるためにどのようなことをしているのか。

リモートワークと出社のハイブリッドな働き方を支えるために、これからのオフィスはどうあるべきか。月刊総務の豊田氏と、NTT Comの山本氏がそれぞれ、今後のハイブリッドなオフィス戦略について深掘りした。

オフィスの在り方は経営方針そのもの

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オフィス作りというのは場ありきではなく、どういうような会社にしたいのか、どういうような働き方を実現したいのかというところがベースにあって、そのための場作りが大きな目的となる。一方で、働き方は経営方針や技術の進化、社会の動向により変化する。

「現場から言われたり、あるいはトップから言われる前に、総務として働き方の変化をどうやって察知して先回りするかというのが、オフィスの戦略総務的な動きに必要」と、豊田氏はオフィス戦略に問われるものを語る。

働き方の原則は、多様な選択肢から各自が判断する

 コロナ禍以降、企業は強制的な在宅勤務を導入し、原則テレワークに踏み切った。感染者数のピークが落ち着くと原則出社に舵を切ったが、またその次の波が来ると出社を控えるといったように、戦略がなく原則出社と原則テレワークを右往左往しているように見える。

「このまま行ったり来たりしているままでいいのか」と豊田氏は問いかける。これからはVUCAの時代であり、何が起こるか分からない。コロナ以外の新しいパンデミックや他のリスクが生じる可能性もある。その際に画一的な原則論で乗り切ることができるのか、ということだ。

「本来的には、原則多様な選択肢から各自が判断する、あるいは各チームで判断するのが原則であって、会社総務が原則を決めてしまわないほうがよい」と豊田氏。自走をする組織として、多様な選択肢から各自判断をする、ということこそが原則であるべきというわけだ。

またDEI(Diversity, Equity & Inclusion)の観点でも画一的な原則論は通用しないという。多様な人、価値観、生き方があり、それぞれの違いを認め合うことが必要となる。「各自が色々選べるような最大限の選択肢の提供がこのDEIという流れにおいても必要」だと豊田氏は語る。出社かリモートワークのいずれかにこだわることなく、変化を見据えてオフィス作りを考えていく必要があることは間違いない。

ハイブリッドな働き方で、場所と時間の制約がなくなった

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勤務時間や場所の制約がなくなり自由に選択ができるハイブリッドな働き方は、自由に働かせることを目的としているわけではない。

豊田氏は「生産性の向上や従業員の満足度の向上を目的とするだけでなく、企業が人材を獲得するうえでも採用の必要な条件」と指摘する。

2年間のコロナ禍を経て、働く側も柔軟な働き方に慣れてきていることから、企業は柔軟な働き方の選択肢を提示できないと、採用にも困るというわけだ。

何故そこで働くのか、という意味付けが重要

 豊田氏は、「働く場所にはセンターオフィスだけでなく、サテライトオフィスもあれば、デジタル空間もあり、ノマドやワーケーションなど色々な形の多様性が出てきている」と話す。重要なのは「どこで働くかではなく、なぜそこで働くのか」だと。

 何かを目指すため、成果を出すために人は働く。その働き方を支えるための場であるはずだ。逆に総務は、「なぜその場所を用意したのか、どのような成果を上げるために用意したのかというストーリーをもたないといけない」と豊田氏。

 何でもできる万能型のオフィスではなく、特定の目的にフォーカスした場としてオフィスをどう定義付けるか。「出社する場所」ではなく、「〇〇をしに行く」という目的がある場所にする。そのようにオフィスの定義づけを変えることによって、ワーカーにとって刷り込まれ、そこで働くことのストーリーになり得ると言えるだろう。

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今後のオフィスの役割は、コミュニケーションと文化醸成・OJT

月刊総務でアンケートを取ると、今後のオフィスの役割として回答が多い順として「社内コミュニケーションの場、チームで作業をする場、社風・文化を醸成する場、教育・OJTの場、社外コミュニケーションの場」と豊田氏は明かす。「集団で何かを成す場として捉えられていることからも、単純にオフィスと表現するのではなく、新しくネーミングを変え、フォーカスする場として定義し宣言した方が、従業員の意識も変わるのではないか」

最後に、総務の役割についても豊田氏はこう語る。「場の仕立てだけではなく、効果を上げるためのガイドライン、トレーニングをしっかりと伝えること、ただハードを作るだけではなく、ソフトの部分をいかに作り込んで伝えていくかということ」が総務の役割として大事だという。そのために「まず総務が、ファーストユーザー、ファーストペンギンとして、実際に総務部内でやってみるとか、あるいはスタッフ部門の中で他部門とのやり取りがどういう風にしやすいかなどを、実験してみて、効果検証をして、現場に伝えていくことが必要」だと豊田氏は提案する。

総務が戦略的に、経営方針や社会の動向から働き方の先読みをし、最大限の選択肢を用意するだけでなく、それがしっかりと機能するように意味付け、定義付けをして従業員に伝えていく。さらに「利用状況をウォッチして、自社にとってどういった意味合いの場が一番求められているのか」をさらに研ぎ澄まして本当に最適化をするということが求められると豊田氏は話す。

働き方のハイブリッド戦略をすすめる中で、オフィスが利用される場になるかどうかのキーとなるのは、目的を従業員に"丸投げ"するのではなく、多様な働き方を想定しながら、色々な場を作り込み、継続してブラッシュアップしていけるかどうかということになるだろう。

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月刊総務代表の豊田 健一氏

ハイブリッドワークを軸にした経営改革を進めるNTT

続いて、ハイブリッドオフィスの実現を支えるサービス「droppin(ドロッピン)」の事業推進リーダーであるNTT Com コミュニケーション&アプリケーションサービス部の山本氏は、自社の事例をもとに、リモートワークを軸としたハイブリッドワークにおけるオフィス戦略や働き方の実態について語った。

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シェアオフィスの一元提供サービス「droppin」

NTT Comはリモートワーク率が80%を超え、2022年7月からは勤務地を自宅とする日本全国どこに住んでもいい居住地の自由化や転勤・単身赴任の廃止などリモートワークのその先にあるフレキシブル・ハイブリッドワークを推し進めている。

「NTT Comは経営や社会のニーズとクラウドファースト・モバイルファーストという技術トレンドに合わせる形でワークスタイル変革を進めてきた」と山本氏は話す。社会・産業のトランスフォーメーションを実現するためにも、ワークスタイル変革が必要なのだという。

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NTT Comのワークスタイル変革は「環境・ツール」「制度・ルール」「風土・意識」の三位一体で取り組んでいる。

「環境・ツール」面では、ライフスタイルに合わせて働く場所を選択できるように、環境・場所に依存せずにリモートで業務が可能な「Secured PC」を全従業員に導入した。業務・場所に合わせた多様なロケーションの選択が可能になるとともに、生産性・利便性の向上と高いセキュリティ維持を両立させている。

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 その結果、約80%の従業員がリモートワークを実施している。但し業務や営業職の場合は担当顧客業界によってもリモート化率に差がある、と山本氏は明かす。

「サービス開発部署だとリモートワーク率は94%程度にまでなっている。営業の場合は担当している業界によって対面商談を求められることが比較的多い公共のお客様と、ほぼオンライン商談に移行したIT業界のお客様とではリモートワーク率は23%の差がある。

画一的にルールを決めてしまっても、実態とギャップが出てしまう」と山本氏。業務や状況に合わせたフレキシブルな働き方が求められるということだ。

働く場所を柔軟に選択できるようにするためには、アナログの制約をとりのぞくことも重要だ。いくらリモートワークをしていても、書類の郵送や押印のために出社しないといけない、ということはないだろうか。ハイブリッドワークを推進するうえで、ペーパーレス化の取り組みは欠かせないだろう。

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NTT Comでは全社でペーパーレス施策を推進している。

契約書や見積書などの社外と取り交わす文書は電子署名・電子印影を積極的に採用し、社内の文書については電子サインやサインレスを基本とした。

「ハンコ出社が必要なくなったことで、出社頻度はかなり減った」と山本氏は話す。

ハイブリッドワークにおけるオフィスの目的は「Change」「Creation」「Collaboration」

NTT Comは首都圏にあった3つのビルを2箇所に集約し、出社率の上限を3割に設定した。

単に仕事をするための"出社する場所"ではなくなったオフィスの目的を3つの「C」を具現化する場所として再定義した。

山本氏は、「Change」の具体的な例として集中スペースとリフレッシュゾーンを挙げる。

「オフィスの至る所に個室ブースがある。出社時のオンライン会議参加だけでなく、集中作業や1on1の場所としても活用されている。一方、各フロアの窓際コーナーには、窓に向かったカウンター席があり見晴らしの良い席でリフレッシュすることができる」と、オンオフの切り替えができる仕掛けになっている。

「Creation」「Collaboration」については、カフェのようなガレージを作り、「商談や社内外の有識者セミナーなど、社内外との接点の場」になっていると山本氏は話す。

また大手町にある本社ビルには「OPEN HUB」というコンセプトや社会実装の実験場があり、お客様・協力会社との共創や協業の場として活用されている。今後は、ワークプレイスの使用状況の見える化も準備中だ。

オフィスと在宅勤務以外の働く場も用意

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「センターオフィスは集まれる場、コラボレーションする場という定義をしているが、出社率としては全体で2割。

それ以外の8割の人はリモートワークをしているわけで、リモートワークにおける生産性の向上とウェルビーイングを目的として、サテライトオフィスの拡充にも力を入れている」と山本氏。

サテライトオフィスはNTTの通信局舎を利用した自社施設だけではなく、民間のシェアオフィス事業者とも提携して全国で利用できるようにしている。

これまでは原則片道2時間以内で通勤できる場所に住む必要があったが、新しく導入されたリモートスタンダードの制度では、国内であれば居住地を自由に決めることができる。全国どこでも仕事ができる環境を用意することで、個々のライフスタイルと業務内容に合わせてワークプレイスを使い分けするのがNTT流だ。

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 総務部が主導して多様な選択肢を整理、作成したオフィスの取り扱い説明書

従業員向けに、それぞれワークプレイスの目的や使い方、リモートワークを行う場合の作業環境の主なポイント、注意事項、利用シーンをまとめて「オフィスのトリセツ」として総務部が社内に提示している。

山本氏は、「こういった形で情報発信をしつつ、実際に利用する人が迷わないような仕組みをハードとソフトの両面で充実させていくことが重要」だと力を込める。

在宅勤務の不都合な真実を見て見ぬふりをしない

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NTT Comが2021年9月に実施した社外アンケート調査によると、259社の経営者や総務・人事担当者の約3割が「在宅勤務に何らかの課題がある」と回答している。

家庭環境や作業場所等の在宅勤務環境に関する課題、勤務時間の管理やちょっとしたコミュニケーションなどの従業員の管理に関する課題、代替オフィスなどのより自由度の高い就業環境のあり方に関する課題などだ。

シェアオフィス等、在宅勤務以外の働く場を提供している企業は2割以下という結果だった。

「在宅勤務の課題を放置することによって、会社には在宅勤務として報告しながら、隠れてカフェ・喫茶店などでリモートワークをする」ワーカーが増えていると山本氏は忠告する。

山本氏が別のアンケートで会社員500名を対象に市場調査をした結果では、実に半数以上の会社員が自宅以外の場所で仕事をしたことがあると回答したのだ。

在宅勤務しか認めていないという企業が大多数である一方で、会社には申告しない"在宅勤務以外"のリモートワークがひそかに浸透しているのが実態だ。

山本氏は、「カフェや会社に認められていない場所でのリモートワークは、突然のオンライン会議で声が発生できず不便であったり、利用料金が気になったりと生産性も下がるしワークエンゲージメントにも悪影響」と指摘する。

こういった実態も踏まえると、これからのオフィスや労働環境には全社一律の原則を強制するのではなく、従業員の業務や状況に合わせてワークプレイス選びができる環境を用意することがこれまで以上に必要になってくることは間違いない。

特に、オフィスや在宅勤務以外にも従業員が安心・安全に働ける場所を会社が提供するためのソリューションとして、全国の多様なシェアオフィスを一元的に提供するdroppinは選択肢になるのではないだろうか。

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NTT Comの山本 清人氏

本記事は、2022年9月にNTTコミュニケーションズが月刊総務と共催したウェビナーの講演をもとに作成したものです。オフィス戦略や施策を考える方にとって、お役に立てましたら幸いです。

droppinではオフィス・ワークプレイスのフレキシブル化やハイブリッドワークに関するご支援をしています。よろしければお気軽にご連絡ください。

お問い合わせ先:droppin-sales@ml.ntt.com

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